「ラーメン代稼ぎ」という言葉が広まったので、この概念が正確には何を意味するのか説明する必要があるだろう。


ラーメン代稼ぎとは、ベンチャーが起業家の生活費をギリギリまかなえる程度の利益を上げることだ。かつてのベンチャーが目指したのとは違う収益だ。かつての収益は、大きく賭け、最終的に利益を生むことを目指したが、ラーメン代稼ぎが主に重視するのは時間を稼ぐことだ。[1]

かつてのベンチャーは通常、かなりの大金を費やしたあとで、ようやく損益分岐点まで達した。コンピュータのハードウェアを作る会社は、毎年5000万ドルを費やしながら、5年間、黒字化しないかもしれない。だが黒字化したら、毎年5000万ドルの黒字となる可能性がある。こういった黒字がベンチャーの成功を意味した。


ラーメン代稼ぎは正反対だ。1カ月あたりの利益は3000ドルでしかないが、2カ月後に黒字となるベンチャーだ。というのも、25歳前後の数名の社員しかおらず、彼らは事実上、普通の生活程度のお金で生活できるからだ。1カ月あたり3000ドルの利益は、企業が軌道に乗ったどころか、成功への足がかりを得たことすら意味しない。だがラーメン代稼ぎに達したベンチャーは、かつての黒字化したベンチャーと重要なところで一致している。存続のために金を調達する必要がなくなったんだ。


ベンチャーのラーメン代稼ぎは、ごく最近になってはじめて可能になったアイデアだから、ほとんどの人にはなじみがない。ラーメン代稼ぎは、多くのベンチャーにはまだ不可能だ。たとえば、ほとんどのバイオテクノロジーのベンチャーでは無理だろう。だが多くのソフトウェアのベンチャーには可能だ。というのもソフトウェアのベンチャーは非常に安くなったからだ。多くのベンチャーで、唯一の実質的なコストは起業家の生活費だ。つまり生活費さえまかなえれば黒字化する。


このタイプの黒字化の主な意味は、もう投資家の言いなりにならないで済むってことだ。まだ黒字でないなら資金は減少している。最終的には資金を調達するか、もしくは会社をたたむ必要がある。おそらく、かなり早くそうなるだろう。いったんラーメン代稼ぎに達すれば、この苦しい選択から距離を置ける。なお資金を調達してもいいが、あわてる必要はない。


* * *

資金調達の必要がないいちばん明白な利点は、より良い契約を結べることだ。「起業家は資金を必要としている」と投資家が知ると、時として、ついつけこみたくなる。起業家は資金がなくなると弱腰になると知っているので、一部の投資家はわざと企業を失速させることすらありうる。

だがラーメン代稼ぎには、それほど明白ではないメリットが他にも3つある。1つ目は投資家にとって、より魅力的になることだ。どんなに小規模であろうと、すでに黒字化しているなら、(a) 少なくとも起業家にお金を払う誰かがおり、(b) 起業家は人々が望むものを真剣に作っており、(c) 起業家はコストを低く抑えておけるほどに自制的である、ということを意味している。それほど遠くまでは行っていなくても、ちゃんとした道を進んでいるんだ。


投資家の三大不安を取り除いてあげたのだから、投資家は心強い。投資家が、大きな市場におり賢い起業家がいる、まだ成功していない企業に資金を供給することはよくある。そういった企業が失敗するとき、通常、その理由は (a) 人々に販売するのが難しすぎたり、市場がまだ成熟していなかったという理由で、人々がその商品にお金を払わない (b) 起業家がユーザが求める問題ではなく、間違った問題に取り組んでしまった (c) 黒字化する前に浪費しすぎ、自分たちの資金を食いつぶしてしまった、というものだ。ラーメン代稼ぎに達すれば、もうこれらの落とし穴にはハマっていない。あとはそのまま進めばいいだけだ。


ラーメン代稼ぎの別の利点は、士気が上がるってことだ。だんだん自分の生活費を稼いでいる気になってくる。最初に起業したころは、企業はかなり抽象的なものに感じられる。法的に企業なのだが、企業と呼ぶのも嘘のような気がする。かなりの金額を人々が払うようになると、ほんとうに企業になったと感じ始める。自分の生活費がいちばん重要な分岐点だ。というのも、その時こそ未来が離陸した時点だからだ。今や倒産ではなく、存続がデフォルトとなったのだ。


ベンチャー経営の精神的な負担は実に重いので、その規模のベンチャーでは、士気を高めることはたいへん重要だ。未だベンチャーは非常に珍しい。なぜもっと多くの人がベンチャーを起業しないのだろうか? 金銭的なリスクがあるから? 大多数の25歳は、どうせ貯金なんて持ってないだろう。時間がかかるから? 多くの人は、フツーの仕事で、だいたい同じくらいの長時間、働いている。人々がベンチャーを起業できないのは、非常に重い責任を持つことに対する恐怖だ。そして、それはばかげた恐怖ではない。実際、それは耐え難い。その重圧をいくぶん軽減するものなら何であれ、あなたを生き残らせる可能性を大いに高めるだろう。

ラーメン代稼ぎに達するベンチャーは、失敗するより成功する可能性が高いだろう。ベンチャーの結果は統計的に二峰性分布であり、失敗か大儲けかのどちらかであることを考えると、成功の可能性が高いのはエキサイティングだ。


ラーメン代稼ぎの4番目の利点は、いちばんわかりづらいが、いちばん大切かもしれない。資金を調達する必要がなければ、資金調達のために仕事を中断しなくて済むんだ。

資金調達はすごく気が散る。生産性が1/3となるので済めば幸いだ。それが何カ月も続くかもしれない。


どうして資金調達がそれほど気を散らしてしまうのか、私はこの年になるまで理解できなかった。(もっと正確には、思い出せなかった)。通常、私たちが資金を提供したベンチャーが資金調達をしはじめると、徐々に減速することには気づいていたが、その詳細な理由を、YC自身に増資するときまで思い出せなかった。私たちの資金調達は比較的、簡単だった。最初に話した人々がYesと言ってくれたのだ。それでも話がすっかり片付くまでには何カ月もかかった。そしてその間、私は本当の仕事はほとんどできなかった。なぜ? しょっちゅうそれについて考えていたからだ。

ベンチャーはいつだって、非常に緊急な1つの問題を抱えていることが多い。つまり夜、床につくときや朝、シャワーを浴びるときに考えることだ。資金の調達を始めると、資金調達が考える問題となってしまう。朝にシャワーは1回しか浴びないし、その時、投資家について考えているなら、製品については考えないだろう。


もし資金調達の時期を選べるなら、他に重要なことがない時を選べるし、おそらく資金調達期間も速く終わると主張したっていいだろう。資金調達期間を終わらせる必要はないと思えるのなら、資金調達期間に頭がいっぱいにならなくても済む可能性すらある。


ラーメン代稼ぎはその定義以上のものではない。たとえばそれは、ベンチャーを「独力で経営する」、つまり「投資家からの資金を決して貰わない」ということではない。経験的には、投資なしで大変うまくいくとは思えない。投資を受けずに成功できるベンチャーは稀だ。ベンチャーがもっと安くなるにつれ、おそらく、投資はもっと普通のことになるだろう。一方、投資先を探している資金がある。ベンチャーがそれほど資金を必要としなければ、より好条件で資金を得ることができるし、資金を獲得できる可能性も高まるだろう。起業家は投資家と対等な立場に立てるようになるだろう。

ラーメン代稼ぎは、ジョー・クラウスのアイデア、つまり「製品のベータ版を作ったら、ビジネスモデルもベータ版にするべきだ」ということも意味しない。ジョー・クラウスは、それがみんなが最初から起業家にお金を払ってくれるようにする良い方針だと信じている。私は、それは厳しすぎるんじゃないかと思う。Facebookはそうしなかったが、ほとんどのベンチャーよりも上手くやった。すぐお金を稼ぐことは、Facebookには不要だっただけではなく、おそらく有害だっただろう。もっとも私は、ジョーのやり方は多くのベンチャーには役立つかもしれないと思う。「起業家の気が散っているな」と思うと、私は時々、そういった制約が行動につながることを期待して「自分たちの製品に対してユーザに支払わせようとしたら?」と提案する。

ジョーのアイデアとラーメン代稼ぎの違いは、ラーメン代稼ぎに達した企業は、その方法でお金を稼ぎ続ける必要はないということだ。お金さえ稼げれば何だっていい。最も有名な例がGoogleだ。最初、GoogleはYahooのようなサイトに検索をライセンスすることでお金を稼いだ。最終的なGoogleのビジネスモデルはまったく別だったのだが、当時、検索をライセンスしたおかげで稼いだ資金は役立ったに違いない。

ラーメン代稼ぎの欠点は何だろうか? おそらく最大の危険は、コンサル会社になってしまうことだ。ベンチャーはみんなが使うただ1つのものを作るメーカーになるべきだ。ベンチャーの質は成長の速度で特徴付けられ、コンサルは製品のようにはスケールしない。 [3] だが月に3000ドルのコンサル会社になるのは、かなり簡単だ。それは現実には安売りする契約プログラマーだろう。だからコンサルをすると、実際には全くベンチャーではないのに、自分たちはラーメン代稼ぎのベンチャーだと言い張りたくなる危険性がある。
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初期にちょっとだけコンサルの仕事をしたからってダメじゃない。ほとんどのベンチャーは、起業直後にはたいてい妙なことをやっているものだ。だが、ラーメン代稼ぎが最終目標ではないことを思い出そう。ベンチャーの目標はすごく高くなりうる。ラーメン代稼ぎは、途中で倒産しないためのコツなのだ。


[1] 「ラーメン代稼ぎ」の「ラーメン」とはインスタント・ラーメンのことで、手に入る食料としてはほぼ最安のものだ。

この言葉を文字通りに解釈しないでほしい。インスタント・ラーメンを常食にしたら非常に不健康だろう。もっといい食糧源は米と豆だ。もしお持ちでないなら、炊飯器に投資することから始めてほしい。
2n人用の米と豆料理

 オリーブ油かバター
 タマネギ・・・n個
 あり合わせの生野菜
 にんにく・・・3n片
 白いんげん豆か赤インゲンマメかブラックビーンの12オンスの缶・・・n缶
 クノールビーフコンソメか野菜ブイヨン・・・n個
 その場で挽いた黒こしょう・・・小さじ3杯
 クミン・・・粉のもの。茶さじ3杯
 生米・・・nカップ。できれば玄米


炊飯器に米を入れる。米のパッケージに指定されているとおりの水を入れる。(デフォルトでは米1カップにつき水2カップ)あとは炊飯器のスイッチを入れ放っておく。


たまねぎと他の野菜をみじん切りにする。玉ねぎが透けるまでごく弱火で炒める。みじん切りにしたニンニク、コショウ、クミン、油を少し入れ、弱火のままかき混ぜる。さらに2~3分炒め、缶に入っている煮汁を捨てないように豆を加えてかきまぜる。ブイヨンを加え、ふたをして、さらに少なくとも10分は弱火で煮込む。焦げつかないよう様子を見ながら、ときどきかき混ぜること。


お金を節約したければ、豆はディスカウントストアの大缶を買うこと。またスパイスもまとめ買いしたほうがはるかに安くなる。近くにインド食材店があるなら、クミンはスーパーの少ビンと同じ値段で大袋が手に入る。


[2] 投資家から起業家への権力のシフトが、実際にベンチャー・ビジネスの規模を大きくする可能性は十分にある。私は、投資家は現在、起業家に対し厳しすぎるという過ちをおかしていると思う。投資家がそれを止めざるを得なくなったら、ベンチャー・ビジネスは全体としてうまくいくだろう。制約となる法律を廃止したときに見られるような市場の拡大を見られるかもしれない。投資家は起業家の最大の頭痛の種の1つだ。投資家が、苦痛を引き起こすのを止めたら、起業家になることは、もっと良いだろう。そして起業家になることが今より良くなれば、さらに多くの人が起業するだろう。


[3] ベンチャーがその規模に比例しながらコンサルを変化させつつ成長することも想像可能だ。だがコンサル企業がそうしたなら、それは立派なメーカーだろう。


ビリオネア養成学校と呼ばれるYcombinatorの創始者が語っているだけあって説得力が違います。

 

nanapiのけんすうさんもラーメン代稼ぎには肯定的な意見をお持ちのようです。

 

www.slideshare.net

 

 ポールグラハム、それからairbnbの創業者、nanapiのけんすうさん、

家入一真氏も受託もしくは主なサービスが軌道にのるまで別のやり方で会社を潰さないように

やりくりしていた方々です。

 

最初からVCから出資を受けるのは稀ですし、彼らはIPOできない事業に関しては見向きもしないでしょう。

ガイ・カワサキ氏は著書で、「VCから出資を受ける確率は、晴れた日に落雷に遭う確率より低い」と語っています。

 

それにアメリカではVCからの出資が日本より盛んですし、起業文化も日本とは比べ物になりません。

最近、日本でも起業ブームが起きていますが、まだ需要と供給のバランスがとれているとは言い難いです。

日本では、まず受託開発それから自社サービスの開発という戦略の企業が多いですね。

 

堀江貴文氏も著書

 

堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方

堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方

 

 で仰っていた様に、まずは受託で地盤を固めてそれから出資や融資を受けるやり方が"無難"だと思います。

「無難」だと書いたのは何故か、あくまでも僕の個人的な意見なんですが、事業の成功というものに最も重要なものは

タイミングだと思います。

時期を逃せばどんなに素晴らしいアイデアでも成功するのは難しいです。

ただ、その時期というのは誰でも分かりませんし、言ってしまえばほぼ運ということもあります。

 受託するとなると、受託開発の方に力を注がなければなりません。

ですので、最も重要な「タイミング」を逃す可能性も多いにあります。

全てのリソースを注がなければ成功することは難しいでしょう。

 

 

 まとめ

僕はやりたいことが明確でない人もしくは資金ショートしてしまいそうな人はとりあえず受託から、資金にゆとりがあり

やりたいことが明確であるならば本サービスに全てのリソースを注いだ方が賢明だと思います。

VCから出資してもらえる価値のある事業だとしても、こちらも資金不足でなければ対等に交渉できますしね。

 

今回もお読みいただきまして誠にありがとうございます。

また次回もよろしくお願い致します。